blue_surface’s blog

なかなか更新されないブログです。漫画大好き。

とよ田みのる先生スピリッツ読切作品『デビュー』(改題:ロストワールド)

久々にスピリッツ買いました。

 

目的はもちろんとよ田みのる先生の新作読切『デビュー』を読みたいがため。

 

何から書いていいかわからないが、読んだ後に「これは何かを書かなければ…!」と思わされるほど心に刺さった作品でした。

 

今回の主人公は『ラブロマ』の主人公の姉、星野零……のキャラが主人公。

とよ田先生としてはスターシステム的なパラレル世界のつもりだったけど、みんなの反応を読んでたら『ラブロマ』の続きとしても解釈はどちらでもいいですよ、とのこと。

 

個人的にはネギ弟が出てこないので、パラレルなものだと思うことにしておきます。

(ただおねショタが好きなだけですね…)

 

俗にいう漫画家漫画というやつですが、中身は立派なとよ田節。

話の流れ的にはもっと負のスパイラルに落ち込んでどんよりしたものになりそうなんですが、そこをうまくコメディに変化させてます。

 

とよ田先生の作品はどれもそうなんですけど、「楽しく幸せなコメディ」なんですよね。笑いも、涙も、怒りも、悲しみも、狂気すらもすべてコメディに変えてしまう。だからと言ってそれぞれの味が薄れるのではなく、それぞれの感情を持ち合わせたまま芯にあるものがぶれない。

 

そしてページをめくるたびの急展開にハラハラドキドキして。特に今回「動」から「静」への切り替わりが読んでて震えました。

とよ田先生の昔の作品『FLIP-FLAP』では「静」から「動」へのパターンがあって(「世界は俺とピンボールだけ!」)、そこがめちゃくちゃ大好きなシーンなんだけどあれの逆パターン。

 

あ、『FLIP-FLAP』はとよ田先生が個人で電子書籍化されてるので、こちらも是非。単巻で終わる名作です。

 

FLIP-FLAP (FUNUKE LABEL)

FLIP-FLAP (FUNUKE LABEL)

 

 

 

 

そして読後感に浸れる幸せ。とよ田先生の作品読んだ後はなんかふわっと心が幸せになるんですよね。いい漫画を読んだー、という満足感も含まれているんだけれども、それだけではない温かい感覚。

先生がよく言われる「どいつもこいつも幸せになれッ!」が根底にあるからこその作品なのかな、と。

 

さらに、今回の作品はとよ田先生自身の体験が下書きにあるからか、何とも言えないリアリティというか真に迫った感じがあるんですよね(あくまでも自伝ではないそうですが)。

 

実際のとよ田先生も賞をもらったのは10本目の作品だったり、零がコミティアで千部刷って一部だけ売れた漫画『SERIAL』は、実際とよ田先生がデビュー前にデザフェスに持っていって数冊しか売れなかったらしい幻の漫画だったり。

 

そういやコミティアでの零のブースの隣は『FUNUKE LABEL』(とよ田先生のサークル名)が出てますね。(『最近の赤さん売ってました)

 

あと、とよ田先生にしては珍しく他の漫画(自分の他の作品ではなく)をネタに使ってるんですよね。白面の者(小学館)とか田宮良子(講談社)とかエシディシ集英社)とか。このチョイスがまたいいとこ突いてくる。

(というか白面の者のシーン、完成前に藤田先生に見てもらってるらしいです、それもすげえな…!)

 

『漫画家漫画』ということをうまく使って、漫画をよく読んでる人ほど、とよ田先生をよく見てる人ほどいろいろとわかる小ネタが挟んであって、それも面白さの一因となってます(もちろん元ネタわからなくても作品の面白さに変わりはないですが)。

 

 

 

ところで、昔とよ田先生の読切で昔週刊少年サンデーに『CATCH&THROW』という作品がありました。

 

 

 

 

これも、ものすごい面白いのでぜひ読んでもらいたいんですが、

その作品のあとがきでとよ田先生は

 

「この漫画のタイトル『CATCH&THROW』の意味ですが僕が描いてきた漫画全てのテーマに通ずるものだと思ったので今回の短編集のタイトルにもしてみました。

ブコメでもあり(ラブロマ)、

マイナースポーツでもあり(フリフリ)、

コミュニケーションの話で(友100)、

僕が今まで描いた漫画の総決算なお話でした。」

 

 と書かれていました。

実際、総決算みたいな感じで詰め込まれていて当時読んだときはボロ泣きしながら「この読切、今まで人生で読んだ読切の中で最高傑作じゃないか…!?」と思いました。今でもその時のサンデーは大事に取っています。

 

『CATCH&THROW』が当時での総決算だとするならば、今回の『デビュー』はそこから『タケヲちゃん物怪録』『最近の赤さん』『デッパちゃん』『オバケのサリー』『短編集 イマジン』『金剛寺さんは面倒臭い』で使った手法・培った物も含めた上で、さらにとよ田先生自身のことを下書きにして『ラブロマ』に収束していく総決算の更新作品じゃないかな、と勝手に思っています。

 

それぐらいすごかった、というお話です。

 

とりあえず読めばわかる。

電子でならまだスピリッツ買えるはずなので是非気になった方は。

 

 

あと、ここから本題外れますが、コミティアでへびちか先生に会った零の心情が完全に自分とダブりました。昔、コミティアでとよ田先生にお会いできたとき、全く自分の中で同じような感情が…!憧れの先生にお会いできて緊張なんてもんじゃない心拍数がやべえことになったのは覚えています。まさに「ゴールドエクスペリエンスに殴られたみたいに精神だけが暴走しているッ……ッ!!」状態でした。

 

そこからもっとやばかったのは、あつかましくもサイン色紙を書いていただき(『友100』の道明寺さんを描いてもらいました、今でも大切に持っています)、「先生が言われてたつけ麵屋、行ってみようと思うんですよー」と話をしたら「あ、俺も行きたい、じゃあ一緒に行こうよ」と何故か一緒にご飯に行かせていただくことにまでなり(しかも『トガリ』『クロザクロ』の夏目義徳先生もご一緒に)、最終的に東京駅まで送っていただき、なんかとんでもないことが起こりすぎてあれは今でも夢だったんじゃないかと思っています。

 

先生、その節は本当に本当にありがとうございました。

 

そして、次回作も期待しています…!!ていうか一生ついていきます!!!

 

 

あ、もう一つだけ大事なこと。

今回の作品が単行本化される際にはぜひ柱のアオリもそのまま残しておいてほしいなぁ、と。アオリでとよ田先生の過去の作品を紹介していってるのですが、最初のページのアオリがそのまま最後の作品紹介にしてるところなんて「上手いよなぁ…」と感心させられました。しかもこれ、該当しそうなページにわざと合わせて作品紹介入れてますよね。編集さんすげえ…。

 

 

一応、ここだけ自分の保存用のためにも書き出させてもらおう。

 

とよ田みのる作品①

ラブロマ

どこまでも真面目な星野くんと直情的でツッコミ気質の根岸さんの初々しすぎる等身大ラブコメ。それまでSFやファンタジーを描いてきたとよ田氏だったが、一度思い切ってラブコメを描いてみたのが”事の始まり”。「アフタヌーン四季賞」で大賞となり読切として本誌掲載。これが好評を博し、続編読切を経てとよ田氏の連載デビュー作となった。

 (3ページ目)


とよ田みのる作品②

FLIP-FLAP

絵に描いたように「フツー」な深町くんは、高校最後の日に憧れの山田さんに告白!しかし、付き合うための条件は「ピンボールのハイスコア越え」!?長い時間をかけたネームが担当編集よりボツとなった際に、とよ田氏が心機一転!!友人達とのアメリカ旅行をきっかけに当時ハマっていたピンボールを題材に描いた世界初(?)のピンボール・ラブコメ

  (7ページ目)


とよ田みのる作品③

友達100人できるかな

小学校教諭・直行の前に突如現れた宇宙人。彼らの地球侵攻を回避する条件、それは80年代にタイムスリップして友達を100人作ること!?ラブコメの次にとよ田氏が挑戦したのは自信初のSF連載作。それは「大人の心」と「子供の心」という新たな感情を描くことへの挑戦でもあった。

  (9ページ目)


とよ田みのる作品④

『短編集 CATCH&THROW』

短編集の表題作である、とよ田氏初の少年誌への読切作品であるフリスビーを通した友情物語『CATCH&THROW』(「少年サンデー」掲載)や、ネーム原作を親交のある作家と交換して作画した同人試作品『等価なふたり』など、マンガへの実験的な試みの結晶が詰まった短編集。

  (10ページ目)


とよ田みのる作品⑤

タケヲちゃん物怪録

強い祟りのせいで世界一不運な女の子タケヲちゃんが妖怪屋敷に住むことに!?とよ田氏が新たな題材として選んだのは、広島の怪異譚「稲生物怪録」を下地とした”妖怪×少女”の意欲作。連載終了後に、コミティアでスピンオフ読切も発表している。

  (11ページ目)


とよ田みのる作品⑥

『最近の赤さん』

赤ちゃんが生まれたことをきっかけに、育児日記代わりに4コマ漫画をSNSにアップしたところ大反響に。全体を通した温かな視点が特徴で、これまでのとよ田氏の連載作品とは異なる記録的要素の強いエッセイ漫画。「最近の”成長した”赤さん」がこの本を読んでくれているのが、なによりの成果。

  (16ページ目)


とよ田みのる作品⑦

『短編集2 イマジン』

ジュブナイル、ラブコメグルメ漫画、変身ヒーローもの…と4つの異なるジャンルの読切作品をまとめた短編集。『タケヲちゃん物怪録』の次の新連載を想定して、複数の切り口で可能性を問うべく「ゲッサン」で発表。とよ田氏が創作における自身のさまざまな部分を掘り下げる機会となった。

  (19ページ目)


とよ田みのる作品⑧

金剛寺さんは面倒臭い』

あらゆる事象に合理的に、理性的に接する金剛寺さんに、あらゆる事象に思いのままに、感情のままに向かう樺山くんが恋をした!とよ田氏が自身の深い所を注ぎ込んだ、新たなる代表作にして、世紀のロジカルピュアラブストーリー!!「このマンガがすごい!2019」(宝島社)オトコ編第2位!!

  (32(31)ページ目)


とよ田みのる最新作

『デビュー』

 漫画家の卵が自身の”イマとミライ”を持ち込む…すべての作り手の心に突き刺す一作。

  (ラスト、33(32)ページ目)


 

 

作品を読み終わった後、今度は柱の作品紹介を読みながらそのページを見てください。

多分ニヤッとできます。

 

 

 

 

 

最後に、今回一番好きな作画シーンを貼らせていただきます。

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 なんとも言えないこの表情がめちゃくちゃ好き。